2010年05月28日

損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件

借金返済は気合いと根性


本件は,故Aの相続人である被控訴人らが,控訴人に勤務していた故Aが
平成14年5月14日に自殺したのは,それ以前に連日,肉体的・心理的に
過重な負荷のかかる長時間労働を余儀なくされたことによってうつ病に罹患したことが原因であり,控訴人には故Aに対する安全配慮義務に違反した過
失があると主張して,控訴人に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害
賠償として逸失利益,慰謝料等(被控訴人B1につき5908万2000円,
同B2及び同B3につき各1673万3000円)及びこれらに対する遅延
損害金の各支払を求めた事案である。
(2) 原審は,控訴人の安全配慮義務違反による雇用契約上の債務不履行責任を
認め,被控訴人らの損害賠償請求の一部を認容した。これを不服として控訴
人が控訴したのが本件控訴事件であり,控訴人は,故Aの自殺と長時間労働
等との因果関係,予見可能性,結果回避可能性の存在等を全面的に争うとと
もに,当審における新たな主張として,過失相殺による減額の主張を追加し
た。また,被控訴人らの本件附帯控訴は,原審が遅延損害金請求を訴状送達
の日の翌日である平成16年8月26日からしか認容なかった点(被控訴人
らは,故Aが自殺した日を不法行為日として,平成14年5月14日から支
払済みまでの遅延損害金を求めていた。)に限定して不服を申し立てたもので
ある。
(3) 当裁判所は,被控訴人らの請求は,遅延損害金の始期の点を除いて,原審
が認容した限度で理由があり,遅延損害金の始期の点については,被控訴人
らの請求どおり認容すべきであると判断した。
2 前提事実
当事者間に争いのない事実,証拠(各項末尾に記載のもの)及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 当事者等
被控訴人B1は,平成14年5月14日に死亡した故Aの妻であり,被控
訴人B2は故Aの父,被控訴人B3は故Aの母である。
故Aは,平成8年4月,控訴人に入社し,死亡に至るまでその熊本事業部
で製造課2課組立2係2班(塗装)の一般従業員(平成14年4月1日以降は塗装班のリーダー)として稼働してきた者である。
控訴人は,オートバイの部品を含め自動車部品,農業用機械部品等の製造
・販売を目的とする株式会社である。控訴人は,L株式会社(以下「L社」
という熊本製作所及び浜松。) 製作所の部品生産工場であり,L社の年間計画
(4月から翌年3月まで)及び月計画(毎月3か月先まで)に従い,それに
沿った数量の部品を納入している(甲64)。
(2) 故Aの自殺等
故Aは,心身に健康上の異常のない健康な労働者であった。
ところが,平成14年5月14日午後4時ころ,故Aは,自宅において,
縊頸による窒息により自殺をした(以下「本件自殺」という。)(甲1)。
E労働基準監督署長は,平成16年3月22日,被控訴人B1に対し,本
件自殺による故Aの死亡について,労働者災害補償保険(以下「労災保険」
という。)の年金・一時金支給決定通知をした(甲2)。
3 争点
(1) 本件自殺と業務の因果関係(業務の過重性等)
(2) 控訴人の雇用契約上の安全配慮義務違反及び不法行為における過失(注意
義務違反)の有無
(3) 損害額
(4) 過失相殺
4 各争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)について
(被控訴人らの主張)
ア生産数の激増
故Aは,控訴人の熊本事業部において,平成8年4月から平成14年3
月31日までは一般従業員として,同年4月1日から同年5月14日まで
は塗装班のリーダーとして稼働していた。控訴人は主としてオートバイの部品を生産しており,その需要が多い時期は例年4月から9月ころまでで
ある。
L社から受注していたMJ1リアーパネル(以下「本件パネル」という。)
の生産台数は平成14年が過去最高数となり,また,同年4月及び5月の
生産台数は例年の2倍となることが予定されていた。そのため,控訴人は,
同年4月から9月までの本件パネルの注文数を納期に間に合わせるため
に,同年1月から3月までの間に前倒しで生産し,L社の受注に対応する
計画(以下「ならし生産計画」という。)を立てていた。そして,控訴人は,
ロボットの負荷を減らしながら(ロボットだけでは生産が間に合わないた
め)生産台数を増やすため,同年3月から3組2交替制を導入し,1日9
時間労働を基本に土日フル稼働体制を取った。その結果,故Aは,同年1
月以降,時間外労働(深夜労働)及び休日出勤が日常化していった。
イならし生産計画の破綻
しかし,ベルトコンベアの不調,スケ・ピンホール不良多発,湯じわ多
発,水切り乾燥炉における火災発生などによりラインの停止が相次ぎ,そ
の修正作業のために労働時間数が増えた上,前倒しで生産するという計画
も達成できないままであった。その結果,4月以降に控訴人従業員に大き
な負荷が掛かることは明白となった。そこで,控訴人従業員から従業員の
負荷が掛かりすぎる上,納期に間に合わないおそれが高いことから外注案
が出されたが,外注費が掛かるため採用されなかった。
ウ平成14年4月1日以降の組織体制の変更
控訴人は,同年4月1日に組織体制を大幅に変更させた。すなわち,F
が製造2課組立2係2班(塗装班)の班長から製造2課組立1係1班の班
長に,Gがリーダーから班長に,故Aがリーダーに昇格するとともにHが
新入社員として塗装班に加わった。Hは故Aが亡くなるまで故Aから指導
を受ける立場であり,控訴人において有効な戦力とはなりきれていなかった。しかも,塗装班は,慣れない組織体制で,次項に記載するL社が下請
会社等に実施した外観「品質不良特別展開(1件不具合撲滅展開)」という
品質向上方策(以下「本件品質向上策」という。)や,大幅に増えた生産数
に対応せざるを得なくなった。



Posted by みょちゃん at 19:11│Comments(0)
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