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2010年08月26日

保険金詐欺に至った経緯

本件各犯行と被告人A1とを結びつける主たる証拠は,E1の捜査段階及
び公判廷における供述であるが,E1供述の概要は,次のとおりである。
「A1は,平成12年5月ころ,『(D1を)ぶっ殺してやる。』と言っ
た上,平成7年ころA1が自分に預けた小刀を念頭に『預けてあるものある
べや。』と言ったこともあったが,冗談めかした言い方で,本気だとは思わ
なかった。同じころ,A1は,D1夫妻について『あいつらには保険を掛け
なければならない。何かあったとき大変だ。』と言っていた。A1は,同年
6月ころから,それまではB2社の経営に関しては風見鶏で良いと言ってい
たのに,態度を豹変させ,B2社の多額の負債等について経営責任があると
言うようになり,同年8月ころには,『B2社の借金はお前のせいだ。B2
社に何かあったら全部お前に行く。』などと厳しく責任追及をするようにな
ったほか,強い口調でしつこく『コミュニケーションを取れ。D1とのドラ
イブ何考えてるんだ。D1とのドライブは長いよな。ただのドライブじゃな
いよな。よく考えれ。』などと言われた。また,そのころ,H2の資金が乏
しくなってきたことから,『底をつくぞ。お前何考えてるんだ。』などと責
められるとともに,D1を1億円の生命保険に加入させたことを聞いた。コ
ミュニケーションを取れと言われた際,既に決算期が過ぎていたことから,
D1が濫発した手形や小切手の調査をしっかりしろという趣旨ではないし,
A1は,かねがねD1と仲良くするなとも言っていたから,仕事面で交流す
るようにとの趣旨でもないと考え,その意味を図りかねて悩んだ。同年9月
ころ,U1社で働き始めたばかりの若い者が1人辞めたことがあったが,そ
のころ,A1から,『何で俺があてがったやつを使わないんだ。暴走族上が
りの人間を用意してやったのに。』『D1のおかげで俺は困っているという
言い方をすれ。覚せい剤を使ってD1を狙わせろ。』などと言われた。A1
の目がこれまでと違って真剣であったことから,A1は,D1を本気で殺害
しようとしているのだと理解したが,覚せい剤には二度と手を染めたくなか
ったので,『勘弁して下さい。』と断った。その後,A1から,9月22日
までの間に,『車のドライブって長いよな。』『事故って起こるよな。』
『ドーンとやればすぐだ。』などと言われたが,それ以前に,若い者に覚せ
い剤を使って,D1を狙わせろとの話が出ていたことから,A1が,ハッキ
リとは言わないものの,交通事故を装ってD1を殺害するように指示してい
るものと理解した。また,A1が,U1社の経営が苦しいと言っていたこ
と,D1には生命保険を掛けると頻繁に言っていたことなどから,D1殺害
の目的は生命保険金にあると理解した。A1は,D1を殺害する時期につい
て,『22日にH2がイタリアに発つんだ。』『とにかく時間がないん
だ。』と繰り返し言っており,H2からもイタリア旅行の話を聞いていたこ
とから,A1は,H2がイタリア旅行に行っている間にD1を殺害するよう
指示しているのだと理解した。A1に強い恩義を感じていたし,A1を守る
のは自分しかいないという気持ちから,A1の指示を断ることができなかっ
たが,どうやってD1を殺そうかと考える一方で,何もしないで済む方法は
ないかとも考えていた。」「9月22日,A1から,入札関係の資料を取り
に役所に行くよう指示を受けていたことから,D1をL2車に乗せて役所に
向かった。D1を殺害しないで,まとまった金を手に入れる方法として,宝
くじを持っていたことから,これが当たっていないか確認したが,当たりが
なかったため,他にD1を殺害しないで済む方法も思いつかなかった上,こ
の日を逃すとH2が帰国する29日までにD1と行動を共にする口実がなか
ったことから,この日にD1を殺害するしかないと考えた。(事故の)相手
方に被害を及ぼさないようにするため,車両を欄干等にぶつけることを考え
たが,適当な場所が見つからなかったことから,走行中の自動車に衝突する
ことにした。そして,運転操作を誤ったように見せかけるためにタバコを助
手席側に落とした上,意図的にハンドルを切って加速しながら対向車線に進
入して本件事故を発生させた。」「この事故で怪我をして入院したが,A1
からすぐに退院するように言われたため,24日に退院し,25日には出勤
した。しかし,26日ころ,A1からk地区の方で車ごと海に落ちるよう指
示され,A1の目的は自分に掛けられた保険金を取得することにあるのだろ
うと考えたが,D1殺害に失敗していたので,A1の指示に従うしかないと
考え,翌27日b町の海岸線沿いの道路で海に転落しようとしたものの,ガ
ードロープ(の支柱)に衝突してしまい失敗した。」「(b町の病院から)
札幌に戻ると,A1から,海難事故を偽装して失踪するように言われ,A1
の目的はやはり保険金にあるのだろうと考えた。B1とC1の協力を受けて
c町で釣りの最中に波にさらわれたように偽装した後,B1に大阪に連れて
行ってもらい,ホテルに潜伏した。27日に起こした事故のころの記憶は曖
昧な部分が多い。」「(大阪に潜伏後,しばらく経って)B1とC1に北海
道に戻りたいという気持ちを伝えたところ,11月中旬ころ,B1とC1が
大阪に来て,A1が,北海道に帰りたいなら,U1社に対する借金を返済す
るように言っていると言われ,借金返済の当てもなかったので,北海道に帰
ることをあきらめたが,同月24日,B1とC1から,A1が函館まで汽車
で戻るように言っていると聞かされ,帰るなと言ったり,帰れと言ったりす
るA1の真意を測りかねた。」「26日,函館に着いた後,迎えに来たA1
の車に乗ったが,車中で,A1から『大阪のホテルの周りにヤクザがいたの
に気がつかなかったか。会社に莫大な赤字を背負わせて,A1に迷惑をかけ
たとんでもないやつだということで,ヤクザが勝手に動き回り,危険な状態
だから呼び戻した。D1をやれ。D1をやって自分は生き延びる方法を考え
ろ。やるかやられるかだ。常務をやるしかない。』『直接手を下さない方法
を考えれ。ガスを引いてやれ。社長の俺にそこまで言わせるな。』などと再
びD1殺害を指示された。A1の恩義に報いるために,D1を殺害しなけれ
ばならないという気持ちと,やはり人殺しはできないという気持ちの葛藤が
あり,このときはD1を殺害しようと決意するには至らなかった。」「(2
6日はQ2マンションに泊まり)27日R2店に買い物に行ったが,D1殺
害を実行するための道具という意味と,D1殺害の準備を行っていることを
A1に示すという2つの意味で,調理用ハサミと寒さを防いで指紋を残さな
いようにするための軍手を購入した。同日夜,Q2マンションで,A1,B
1及びC1と4人で酒を飲んだ際,A1に『今日は(D1殺害を)できなか
った』と報告して,購入したハサミを見せると,A1は,『こんなもんで人
をやれないべや。』と言い,自分,B1及びC1に対し,『E1が行きたい
と言う場所に連れて行ってやってくれ。言うな,聞くな,手足になってや
れ。行き先だけ言え。買い物をする品物のことは具体的に言うな。』などと
指示した。A1からハサミで人なんて殺せないと言われたことから,より強
力な凶器を購入しようと考え,28日B1とC1に頼んでT2店まで連れて
行ってもらい,ペティナイフ等を買った。ペティナイフを買った後,B1と
C1にD1宅近くにあるS2店付近まで送ってもらったが,軍手でペティナ
イフを握ると滑ることから,滑り止めのためにS2店でセロハンテープを購
入して公衆トイレでペティナイフの柄にテープを巻き付けた。この日は,D
1を殺さなければならないという方向に気持ちを持って行き,D1宅の様子
をうかがっていたが,気がつくとG1が帰宅しているのが分かったため,D
1以外の人間を傷つけたくないと考え,D1殺害を実行せずに帰った。」
「同日夜,A1,B1,C1及びO2とP2マンションで酒を飲んだが,A
1に,『今日は無理だった。』と報告し,座るときにポケットに入れていた
ペティナイフが邪魔だったので,取り出してA1に見せると,A1は『ほう
っ。』と言い,右脇腹を押さえながら,『腹だけ刺しても死なない。肝臓を
刺さなきゃ駄目だ。確実にやれ。』と言ってきた。A1は,交通事故の影響
で足を引きずっている自分を見て,『そんな足じゃ何もできないべや。鎮痛
剤を打たなきゃだめだ。』としつこく言い,B1に命じてこれを注射させた
後,外から電話があったらしく外出した。その後,A1は部屋に戻ってくる
と,U2社に集金に行った件,V2社の運賃の着服の件,大阪から電話した
件等について自分を責めてきて,テレクラで知り合った女とU2社に行った
こと,ホタテの運賃を一部着服していたこと,大阪から自分の妻やV2社の
W2社長などに電話したことを話したが,このやりとりの際,A1がB1と
C1に対し,『今すぐ行って女房と子供連れて来い。』と指示したことがあ
った。その後,A1は,自分が購入したペティナイフを持ち出し,『俺を刺
せ。B1でも良い。やるからにはどんくさいことだけはしてくれるなよ。や
らないなら帰れ。帰ったらどうなるかわからん。動くぞ。やらないとお前が
やられる。』などと怒鳴り,最後には,B1とC1に対し,『女房と子供連
れて来い。』と指示したが,A1がD1殺害を決断するように迫っているも
のと理解した。自分の妻や娘が連れてこられれば,A1から強姦されてしま
うのではないかと危惧し,それを避けるためには,D1を殺害するしかない
と決意し,A1に『勘弁して下さい。本当にやりますから。明日やりますか
ら。』と,間違いなくD1を殺害するから,妻と娘には危害を加えないよう
に頼むと,その後A1は怒鳴ることがなくなった。翌朝,自分から頼んだの
か,A1から指示してきたのかは記憶にないが,A1がB1に指示して自分
に再度注射をさせた。その後,A1が『E1行くぞ。』と言ってきたので,
ペティナイフをフリースのポケットに入れた上,A1が運転する車で外出
し,国道沿いのどこかで降ろされたが,その間に,A1から5000円札1
枚を渡され,『終わったら連絡をよこせ。』と言われた。A1の車を降りた
後,タクシーを拾い,途中からは徒歩でD1宅に向かい,玄関から中に入っ
て2階に上がり,D1の胸部及び腹部を持っていたペティナイフで数回突き刺して殺害した。」  


Posted by みょちゃん at 17:06Comments(0)

2010年05月28日

損害賠償請求控訴,同附帯控訴事件

借金返済は気合いと根性


本件は,故Aの相続人である被控訴人らが,控訴人に勤務していた故Aが
平成14年5月14日に自殺したのは,それ以前に連日,肉体的・心理的に
過重な負荷のかかる長時間労働を余儀なくされたことによってうつ病に罹患したことが原因であり,控訴人には故Aに対する安全配慮義務に違反した過
失があると主張して,控訴人に対し,債務不履行又は不法行為に基づく損害
賠償として逸失利益,慰謝料等(被控訴人B1につき5908万2000円,
同B2及び同B3につき各1673万3000円)及びこれらに対する遅延
損害金の各支払を求めた事案である。
(2) 原審は,控訴人の安全配慮義務違反による雇用契約上の債務不履行責任を
認め,被控訴人らの損害賠償請求の一部を認容した。これを不服として控訴
人が控訴したのが本件控訴事件であり,控訴人は,故Aの自殺と長時間労働
等との因果関係,予見可能性,結果回避可能性の存在等を全面的に争うとと
もに,当審における新たな主張として,過失相殺による減額の主張を追加し
た。また,被控訴人らの本件附帯控訴は,原審が遅延損害金請求を訴状送達
の日の翌日である平成16年8月26日からしか認容なかった点(被控訴人
らは,故Aが自殺した日を不法行為日として,平成14年5月14日から支
払済みまでの遅延損害金を求めていた。)に限定して不服を申し立てたもので
ある。
(3) 当裁判所は,被控訴人らの請求は,遅延損害金の始期の点を除いて,原審
が認容した限度で理由があり,遅延損害金の始期の点については,被控訴人
らの請求どおり認容すべきであると判断した。
2 前提事実
当事者間に争いのない事実,証拠(各項末尾に記載のもの)及び弁論の全趣
旨によれば,以下の事実が認められる。
(1) 当事者等
被控訴人B1は,平成14年5月14日に死亡した故Aの妻であり,被控
訴人B2は故Aの父,被控訴人B3は故Aの母である。
故Aは,平成8年4月,控訴人に入社し,死亡に至るまでその熊本事業部
で製造課2課組立2係2班(塗装)の一般従業員(平成14年4月1日以降は塗装班のリーダー)として稼働してきた者である。
控訴人は,オートバイの部品を含め自動車部品,農業用機械部品等の製造
・販売を目的とする株式会社である。控訴人は,L株式会社(以下「L社」
という熊本製作所及び浜松。) 製作所の部品生産工場であり,L社の年間計画
(4月から翌年3月まで)及び月計画(毎月3か月先まで)に従い,それに
沿った数量の部品を納入している(甲64)。
(2) 故Aの自殺等
故Aは,心身に健康上の異常のない健康な労働者であった。
ところが,平成14年5月14日午後4時ころ,故Aは,自宅において,
縊頸による窒息により自殺をした(以下「本件自殺」という。)(甲1)。
E労働基準監督署長は,平成16年3月22日,被控訴人B1に対し,本
件自殺による故Aの死亡について,労働者災害補償保険(以下「労災保険」
という。)の年金・一時金支給決定通知をした(甲2)。
3 争点
(1) 本件自殺と業務の因果関係(業務の過重性等)
(2) 控訴人の雇用契約上の安全配慮義務違反及び不法行為における過失(注意
義務違反)の有無
(3) 損害額
(4) 過失相殺
4 各争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)について
(被控訴人らの主張)
ア生産数の激増
故Aは,控訴人の熊本事業部において,平成8年4月から平成14年3
月31日までは一般従業員として,同年4月1日から同年5月14日まで
は塗装班のリーダーとして稼働していた。控訴人は主としてオートバイの部品を生産しており,その需要が多い時期は例年4月から9月ころまでで
ある。
L社から受注していたMJ1リアーパネル(以下「本件パネル」という。)
の生産台数は平成14年が過去最高数となり,また,同年4月及び5月の
生産台数は例年の2倍となることが予定されていた。そのため,控訴人は,
同年4月から9月までの本件パネルの注文数を納期に間に合わせるため
に,同年1月から3月までの間に前倒しで生産し,L社の受注に対応する
計画(以下「ならし生産計画」という。)を立てていた。そして,控訴人は,
ロボットの負荷を減らしながら(ロボットだけでは生産が間に合わないた
め)生産台数を増やすため,同年3月から3組2交替制を導入し,1日9
時間労働を基本に土日フル稼働体制を取った。その結果,故Aは,同年1
月以降,時間外労働(深夜労働)及び休日出勤が日常化していった。
イならし生産計画の破綻
しかし,ベルトコンベアの不調,スケ・ピンホール不良多発,湯じわ多
発,水切り乾燥炉における火災発生などによりラインの停止が相次ぎ,そ
の修正作業のために労働時間数が増えた上,前倒しで生産するという計画
も達成できないままであった。その結果,4月以降に控訴人従業員に大き
な負荷が掛かることは明白となった。そこで,控訴人従業員から従業員の
負荷が掛かりすぎる上,納期に間に合わないおそれが高いことから外注案
が出されたが,外注費が掛かるため採用されなかった。
ウ平成14年4月1日以降の組織体制の変更
控訴人は,同年4月1日に組織体制を大幅に変更させた。すなわち,F
が製造2課組立2係2班(塗装班)の班長から製造2課組立1係1班の班
長に,Gがリーダーから班長に,故Aがリーダーに昇格するとともにHが
新入社員として塗装班に加わった。Hは故Aが亡くなるまで故Aから指導
を受ける立場であり,控訴人において有効な戦力とはなりきれていなかった。しかも,塗装班は,慣れない組織体制で,次項に記載するL社が下請
会社等に実施した外観「品質不良特別展開(1件不具合撲滅展開)」という
品質向上方策(以下「本件品質向上策」という。)や,大幅に増えた生産数
に対応せざるを得なくなった。  


Posted by みょちゃん at 19:11Comments(0)

2010年05月24日

損害賠償請求事件

借金返済を確実に履行する


1 被告A及び被告Bは,連帯して,別紙被害一覧表の「原告番号」4,12,15,23
ないし26,29,35,39,51,52,57,65,66,73,74,77,79,85欄記載
の原告らに対し,それぞれに対応する同表の「請求金額(円)」欄に記載の金員及
びこれに対する被告Aについては平成14年8月31日から,被告Bについては同月
30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告Aは,1項に掲記された以外の原告らに対し,それぞれに対応する別紙被害
一覧表の「請求金額(円)」欄記載の金員及びこれに対する平成14年8月31日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らの被告Cに対する請求及び1項に掲記された以外の原告らの被告Bに対す
る請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用の負担は,以下のとおりとする。
(1) 1項に掲記された原告らは,各々が,それぞれに生じた費用の3分の1及び被
告Cに生じた費用の86分の1を負担する。
(2) 1項に掲記された以外の原告らは,各々が,それぞれに生じた費用の3分の
2,被告Cに生じた費用の86分の1及び被告Bに生じた費用の86分の1を負担
する。
(3) 被告Aは,原告らにそれぞれ生じた費用の3分の1及び被告Aに生じた費用を
負担する。
(4) 被告Bは,1項に掲記された原告らにそれぞれ生じた費用の3分の1及び被告
Bに生じた費用の86分の20を負担する。
5 この判決は,原告ら勝訴の部分に限り,仮に執行することができる。
            事実及び理由
第1 原告らの請求(被告A及び同Cについては,主位的請求(不法行為に基づく請求)
と予備的請求(商法266条の3第1項に基づく請求)とに共通)
被告A,同C及び同Bは,連帯して,原告らに対し,それぞれに対応する別紙被害
一覧表の「請求金額(円)」欄記載の金員及びこれに対する各訴状送達の日の翌日
(被告Aについては平成14年8月31日,同Cについては同年9月13日,同Bについ
ては同年8月30日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要等
  本件は,抵当証券等の金融商品の販売等を業としていた大和都市管財株式会社又
はその関連会社(以下,前者を「大和都市」,後者を「大和都市関連会社」といい,全
体を総称して「大和都市グループ」という。)から同商品を購入した原告らが,大和都
市グループの役員ないし従業員であった被告らに対し,大和都市グループは,高利
の配当を生み出す財政的基盤が全くなく,抵当証券発行直後から,いわば自転車操
業の状態に陥り,その償還等が困難な状況となっていたにもかかわらず,かかる事実
を秘して,さも安全有利な投資であるかのように装って抵当証券等の金融商品を販売
してきた(以下「抵当証券商法」と総称する。)ところ,①これは会社ぐるみの組織的な
詐欺ともいうべき違法なものであり,かつ被告らはそのことを知りながら,同商法を推
進し,あるいは金融商品を販売するなどして上記詐欺行為に加担した結果,原告らに
合計2億9010万円の損害を与えたと主張して,(共同)不法行為に基づき,連帯して
同金額を賠償するよう求め,②役員であったと主張する被告らについては,予備的
に,大和都市グループによる抵当証券商法が上記のとおり組織的な詐欺行為であっ
たにもかかわらず,同人らが悪意又は重過失により役員としての任務を怠ったことに
より原告らに上記損害を与えたと主張して,商法266条の3第1項に基づき,連帯し
て同金額を賠償するよう求めた事案である。
1 前提事実(争いがない事実及び証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定でき
る事実)
(1) 大和都市グループの概要
ア 大和都市とその代表者
(ア) Dは,昭和45年9月ころ,福岡県庁職員を懲戒免職された後,大阪市内
で不動産関係の会社に勤務したり,自ら不動産業を営むなどしていたが,
昭和55年12月,休眠会社であった株式会社伏見屋(昭和44年11月設立の株式会社エムケイが商号変更されたもの)の全株式を買い取り,新都市
計画株式会社に商号変更して自ら代表取締役に就任した。Dは,昭和60
年2月,同社を大和都市抵当証券株式会社に商号変更して抵当証券の販
売業を開始し,さらに昭和62年7月,大和都市に商号変更して抵当証券そ
の他の金融商品の販売等を行うようになり,昭和63年12月21日,近畿財
務局に抵当証券業の登録をした(甲3,4,13,24,25,57の1ないし4,
乙ニ1,13)。
(イ) 大和都市は,資本金を4億5000万円とし,大阪市中央区谷町一丁目5
番7号のストークビル天満橋7階に本社を構えていたほか,平成3年10月
に東京支社(東京都港区新橋一丁目15番7号。なお,登記簿上は,昭和6
1年4月に新宿区内に設置したのが最初である。),平成7年2月に横浜支
店(横浜市中区尾上町三丁目28番地),同年6月に名古屋支社(名古屋市
中村区椿町7番1号),平成11年4月に大阪支社(大阪市北区梅田一丁目
3番1-600号)をそれぞれ設置し,抵当証券等の金融商品の販売拠点と
していた。
大和都市の株主構成は,Dが90パーセント,E及びFがそれぞれ4パー
セント,G及びHがそれぞれ1パーセントであった。そして,Dは,後記の大
和都市関連会社10社を自ら設立し,あるいは買収するなどして実質的に
支配,経営していた(甲3,4,13,57の5ないし12)。
イ 大和都市関連会社とその事業内容等の概要
(ア) ベストライフ通商株式会社(以下「ベストライフ」という。)
ベストライフは,昭和56年3月に設立された新都市住宅株式会社が昭
和60年9月に商号変更したものであり,設立当初からDが代表取締役を務
めていた。最終的に,その資本金は2000万円,その株主構成は,Dが75
パーセント,Dの子であるIが20.25パーセント,Eが2.5パーセント,Fが
1.75パーセント,G及び被告Aがそれぞれ0.25パーセントであった。
同社は,昭和61年6月,その所有不動産に最初の抵当証券付き抵当権
を設定し,以後,昭和62年に取得した奈良市法用町の土地等,平成5年こ
ろにかけて,次々と不動産を取得し,大和都市から融資を受けた外形を採
って抵当証券付きの抵当権を設定している。同社は,平成6年ころから,以
下のように,飲食店等を経営したり,取得した不動産を賃貸するようになっ
たが,いずれの事業も収益を上げることはできず,決算上,毎期数億円の
赤字を計上し,平成12年6月期には,約32億円の債務超過に陥っていた
(甲3,4,7,61の1ないし8)。
a 飲食店経営
① 味わいビル(大阪市中央区)
② 味わいビル(東京都港区新橋)
③ 家庭料理あじわい(大阪市中央区)
④ スーパーサンクス(大阪市中央区)
b ビル賃貸業
c 駐車場経営
(イ) ナイス・ミドル・スポーツ倶楽部株式会社(以下「ナイスミドル」という。)
ナイスミドルは,昭和62年に設立され,株主構成はIが100パーセントで
あった。同社は,平成13年4月当時,200名を超える従業員を抱え,以下
のような事業を営んでいたが,中心であるゴルフ場経営については収益を
上げることができず,決算上,少なくとも平成6年6月期以降,連続7期にわ
たって,数億円から十数億円の営業損失を出し,平成12年6月期では,約
188億円に達する著しい債務超過の状態であった。
同社についても,その所有不動産につき,総額157億円(約5000名)
の抵当証券が発行されたほか,抵当権付き債権一部譲渡の名称で販売さ
れた同社に対する債権は総額102億円(約1800名)に達している(甲3な
いし5,58の1ないし9)。
a ゴルフ場・ホテル経営
(a) 那須グリーンコース倶楽部(栃木県那須郡那須町。以下「那須GC」
という。)
(b) ナイス大原カントリークラブ(岡山県英田郡大原町。以下「ナイス大
原CC」という。)
(c) 那須グリーンホテル(那須GCに併設)  


Posted by みょちゃん at 20:33Comments(0)

2010年05月19日

損害賠償請求控訴

債務整理は法的に認められた借金返済術


第1 控訴の趣旨
 1 控訴人A株式会社(控訴人A)
  (1) 原判決のうち,控訴人Aの敗訴の部分を取り消す。
  (2) 上記部分につき,被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
 2 控訴人B株式会社(控訴人B)
  (1) 原判決のうち,控訴人Bの敗訴の部分を取り消す。
  (2) 上記部分につき,被控訴人Cの請求を棄却する。
  (3) 訴訟費用は,第1,2審とも同被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
 1 本件は,株式会社G(G)から,被控訴人D,同E及び同Fにおいては控訴人Aの仲介によ
り,被控訴人Cにおいては同控訴人及び控訴人Bの仲介により,それぞれ土地建物を買い受け
たところ,いずれも土地に地盤沈下が発生したため建物に不具合が生じたと主張して,① 被控
訴人らが,Gに対し,(ア) 主位的に,(a) 瑕疵担保責任を理由とする売買契約解除に基づく原
状回復請求として,売買代金の返還及び損害賠償の支払,選択的に,(b) 詐欺に基づく各売買
契約の取消し又は錯誤に基づく売買契約無効を理由とする不当利得の返還及び損害賠償の支
払を求め,(イ) 予備的に,瑕疵担保責任に基づく補修費等の損害賠償の支払を求め,② 被控
訴人らが控訴人Aに対し,被控訴人Cが控訴人Bに対し,それぞれ,売買の目的物である地盤の
性質及び施工された基礎工事の内容についての説明告知義務違反を理由として,共同不法行
為又は債務不履行に基づく損害賠償の支払を求めた事案である。
   原審は,上記①(ア)(a)の請求の一部を認容し,②について,被控訴人ら及び被控訴人Cの
各請求の一部を認容し,控訴人らだけが不服を申し立てた。したがって,当審における審判の対
象は,控訴人らの敗訴部分だけである。
 2 「争いのない事実等」,「争点」及び「争点に関する当事者の主張」
   当審における控訴人らの主張を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」第2な
いし第4のうち控訴人らに関する部分のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 控訴人A
    原判決が控訴人A(担当者H)が認識していたと認定した本件各土地に係る「軟弱地盤」な
るものが如何なるものであるか不明である上,地質に関することについて専門家でもない控訴人
Aに対し,このことを告知する義務があるとする原判決は不当である。
   ① 本件各建物には,軟弱地盤による不等沈下はない。
    ア 地盤調査事務所作成の平成9年3月付け報告書(報告書。乙ロ3)には,盛土層だけ
で木造2階建の建物を支持できる旨,腐植土層の支持力は盛土層の支持力より大きい旨の記
載があり,仮に腐植土層で密圧沈下が起きても,この密圧沈下がその上部の盛土層にどのよう
なメカニズムで沈下を引き起こしたのか証明されていない。また,報告書によれば,本件各土地
のサウンディング試験の結果,表面から50センチメートルないし1メートルの部分のN値は,若
干低い部分があるものの5以上であり,これは直接基礎で十分対応できる地耐力を有するもの
である。
    イ 本件各建物の建築当時の傾きは測定されておらず,甲第7号証及び報告書の測定値
は,当該測定時の値であり,地盤沈下による不等沈下であるとの断定はできない。この程度の
傾きは,建築当時から存在する場合が多々ある。
    ウ 地盤沈下の測定は,本件各建物の土台部分で行うのでなければ,本件各建物に沈下
があるか否かの証明にはならない。
    エ 報告書によると,腐植土層の密圧沈下は,その総沈下量73センチメートルと予測さ
れ,残存沈下量は10センチメートル程度と予測されているが,あくまで予測の域を出ない。
    オ 本件各建物の不具合は,建築工事の杜撰さによるものである。
   ② 地質に関する専門家でない控訴人Aには,本件各土地が軟弱地盤であることについて
の告知義務はない。
     原判決の認定する,本件各土地が軟弱地盤地域に属するとの内容(「事実及び理由」第
5の1(2))は,専ら報告書によるものであるが,報告書は,平成9年3月に作成されたもので,本
件売買契約が締結された平成5年から平成6年にかけては存在していなかったのであるから,H
はその内容を知り得なかったものである。
     Hの見た地盤調査報告書(乙ロ1,2)のうち,乙ロ第1号証には,地質に関する記載がな
く,同第2号証は,本件各土地の2箇所のサウンディングによる計測であって,深さ2メートルまで
で6.45メートルには及んでおらず,しかも,地質ではなく地耐力の調査に関するものであるか
ら,Hは,本件各土地が,原判決の認定したような軟弱地盤であることについて認識することは
不可能であった。また,乙ロ第1号証には,木造2階建程度なら十分な転圧等を施工すれば支持
力に問題はないと記載され,乙ロ第2号証には,支持杭で対処するよう記載されており,Hは,J
から,3,4号棟に杭を打つと言われたことから,軟弱な地盤かなと判断したにすぎないのである
から,この報告書により,本件各土地の下に腐植土層があること等を認識できるはずがない。
  (2) 控訴人B
   ① 控訴人B(担当者I)において,C土地を含めた本件各土地が軟弱であることを認識して
いたと認定した原判決は不当である。
   ② 原判決は,Iが本件各土地の地盤が軟弱であることを殊更に避けて説明した旨認定する
が,Iは,本件各土地の地盤の状態について知る機会が全くなかったのであり,本件各土地の地
盤の状態についての説明を殊更に避けた訳ではない。
第3 当裁判所の判断
  当裁判所は,被控訴人らの本訴請求のうち,控訴人Aに対する請求は,原判決の認容した限
度で理由があるので認容すべきであるが,被控訴人Cの控訴人Bに対する請求は,理由がない
ので棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり訂正,付加するほか,原判決の「事実
及び理由」第5の説示のうち控訴人らに関する部分のとおりであるから,これを引用する。
 1 原判決の訂正
  (1) 41頁16行目の冒頭から17行目の末尾までを「Hが重要事項説明書を読み上げるのを
聞き,J及びHの上記説明を聞いた。」に改める。
  (2) 47頁1行目の冒頭から2行目の末尾までを「③ Iは,売買契約当日,被控訴人Cに対す
るJ及びHの説明を聞いた。」に改める。
  (3) 同頁21行目の冒頭から48頁19行目の末尾までを次のとおり改める。
    「(3) 以上によれば,Hは,Jから交付された地盤調査報告書(乙ロ1,2)を見て,本件各
売買契約を仲介する前に,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していたものというべきであ
る。
       一般に,土地建物を購入する者にとって,買い受ける土地の性状がいかなるもので
あるのかという点は重大な関心事である。そして,当該土地が軟弱地盤であれば,その工法の
如何によっては,建物に地盤沈下による被害が生ずることも懸念されるのであるから(本件のD
建物及びC建物におけるように,支持杭工法によったとしても,その施工が不十分であれば被害
が生ずる虞は,なお否定することができない。),軟弱地盤であることが判明すれば,買主として
は,建物の基礎が地盤に対応して適切に施工されているかなどの点について,更に詳しく売主
に確認しあるいは独自に調査をするなどの対応措置をとることができるのであり,その結果なお
不安であれば,売買契約の締結を思いとどまり,他の物件の購入を検討することもできる。
       このような意味で,土地が軟弱地盤であるかどうかは,買主がこれを購入するかどう
かの意思決定において重要な要素となるものであり,本件においても,上記のとおり,被控訴人
らは,H及びJらに対して本件各土地の地盤の状態等について質問していたのであるから,この
点に重大な関心を有していたことは明らかである。
       そうすると,本件各土地が軟弱地盤であることを認識していた控訴人AのHは,買主
である被控訴人らに対し,本件各土地が軟弱地盤であることについて,十分な説明,告知をする
義務を負っていたというべきである。
       ところが,上記のとおり,Hは,被控訴人らに対して,本件各土地が軟弱地盤であると
の事実を説明せず(本件各土地の地盤が軟弱であることについての説明を殊更に避けた説明を
した。),上記の説明,告知をする義務に違反し,その結果,被控訴人らは,本件各土地の地盤
に問題はないと信じ,軟弱地盤であることを前提にした対応措置をとる機会を奪われたまま,本
件各契約に至ったということができる。
       したがって,控訴人Aは被控訴人らに対し,説明告知義務違反を理由とする不法行為
責任に基づき,損害賠償の責任を負うものといわなければならない。
       なお,被控訴人Dに交付された重要事項説明書には,本件各土地が軟弱地盤である
ことを示す記載が存在するが,上記認定のとおり,Hは,売買契約締結時に,口頭でこれを否定する内容の説明を行っており,Hが上記の義務を履行したとすることはできない。
     (4) しかし,Iについては,被控訴人Cとの売買契約の締結の前日Hから送信されたファッ
クスに,軟弱地盤に関する記載はなかったことは,前記のとおりであり,それ以前に,地盤調査
報告書(乙ロ1,2)のような,C土地の地盤に関する情報の提供を受けことも認められないので
ある。そして,上記売買契約の締結の日に読み上げられた重要事項説明書やJ及びHの説明の
内容からは,Iにおいて,C土地の近隣に軟弱地盤地区があるという程度のことは認識することが
できたとしても,それ以上に,C土地自体が軟弱地盤であることについて,明確に認識することが
できたか否かは疑問であり,本件全証拠によっても,C土地自体が軟弱地盤であることを認識す
ることができたものと認めることはできない。
       そうすると,控訴人Bには,被控訴人Cに対する説明告知義務違反はないというべき
である。」
  (4) 51頁16行目の冒頭から52頁11行目の末尾までを次のとおり改める。
    「(2) 控訴人Aに対する請求について
      ア Hが被控訴人らに対して,上記認定のとおり,本件各土地が軟弱地盤であるという
事実を説明しなかったため,被控訴人らは,同程度の代金の別の物件の購入を検討する機会を
喪失した上,本件各建物において安心して快適で平穏な生活を送ることができるという期待を裏
切られて精神的苦痛を被ったということができる。
        そして,被控訴人らの本件売買契約を締結するに至った経緯,控訴人Aの説明内
容,被控訴人らに交付された重要事項説明書の記載など本件に現われた全事情,特に,Hの地
盤の性質に関する説明内容は後になるほど後退しており,被控訴人Fに交付された重要事項説
明書には,地盤の性質について何らの記載もされていないなどの不誠実な言動等の諸事情を考
慮すると,被控訴人らの精神的苦痛を慰謝するためには,被控訴人Dについて480万円,被控
訴人Eについて510万円,被控訴人Fについて500万円,被控訴人Cについて490万円が必要
であると算定するのが相当である。
      イ また,被控訴人らは,被控訴人ら訴訟代理人らに委任して本件訴訟を提起,追行し
ていることは明らかであり,本件事案の難易度や認容額等に照らして,被控訴人らが訴訟代理
人に対して支払うべき手数料のうち,控訴人Aに対して賠償を求めることができるのは,被控訴
人らについて各50万円と認めるのが相当である。
     (3) なお,本件において,Gと控訴人Aとは,賠償すべき損害の内容を異にするため連帯
して責任を負う関係には立たないことを付言する。」
 2 控訴人Aの主張について
  (1) 軟弱地盤による不等沈下の存在について
   ① 同控訴人は,本件各土地の地盤は,盛土層だけで木造2階建ての建物を支持すること
ができ,腐植土層の支持力は盛土層より大きく,沈下のメカニズムが証明されていないし,盛土
層のN値からも十分な地耐力を有するなどと主張する。
     しかし,引用した原判決の認定するとおり,本件各土地の地質は,地表から3.6メートル
は盛土層で,その下の6.45メートルまでは有機質土(腐植土)が厚く堆積しているところ,この
腐植土層の圧密沈下によって地盤沈下が起こりやすい軟弱地盤である。そして,証拠(証人K)
によれば,本件各土地の地盤沈下は,上記盛土層の下にある腐植土層の圧密沈下が原因とな
り,腐植土層の沈下に伴い,その上の盛土層が沈下したものと認められるのである。そうすると,
地表から1メートル部分の盛土層の支持力があるからといって,地盤沈下が起こらないと断定す
ることはできないし,盛土層とその下にある腐植土層の支持力を単純に比較しても意味がないと
いうべきである。また,証拠(乙ロ3,証人K)によれば,N値がそのまま地耐力を示すものではな
いし,報告書のN値は,Nsw(1平方メートル当たりの半回転数)から導かれたいわゆる換算N値
で,高めに設定されていることが認められ,N値が5以上であることから,直ちに十分な地耐力を
有するものとはいえない。
   ② 同控訴人は,本件各建物の建築当時の傾きが測定されていない旨主張する。
     しかし,引用した原判決の認定するとおり,平成9年2月の調査時点と平成12年5月の
調査時点とを比較すると,本件各建物の床面の傾斜,壁や床面の亀裂等の不具合は悪化し,床
面の変形量は増大していることからすれば,建築当時の傾きを測定するまでもなく,沈下が進行
しているものと認められる。
   ③ 同控訴人は,建物沈下による傾斜は,床面で測定せず,土台で測定しないと地盤沈下
の証明にならない旨主張する。
     しかし,証拠(乙ロ3,証人K)によれば,報告書では,建物の傾斜は,本件各建物の基
礎の上端高を基準にして測定されているのであるが,基礎と土台はボルトで連結されているので
あるから,数ミリメートルの誤差は生じるとしても,必ずしも土台で測定しなくても,傾斜を測定す
ることができるものと認められる。また,証拠(甲7,乙ロ3,証人K)によれば,D建物及びC建物
は,土台部分は支持杭で支えられており,床面は床束及び束石で支えられているところ,床面のみが下がっているのであるから,地盤沈下による建物の変形の実態を把握するには,むしろ床
面で測定すべきことに合理性があるものと認められる。そして,上記のような測定箇所で,引用し
た原判決の認定するとおりの数値が現れているのであるから,本件各土地には,地盤沈下が生
じているものと認められるのである。  


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2010年05月13日

トーコロ懲戒解雇等

過払い金を返してもらう条件とは


第二 事案の概要
一 本件は、控訴人に雇用されていた被控訴人が、平成四年二月二〇日に控訴人か
ら解雇されたことについて、解雇が無効であると主張し、控訴人に対し、雇用契約
上の権利を有する地位にあることの確認を求めたほか、平成四年四月分から同年一
一月分までの賃金合計一六八万円の支払及び同年一二月以降毎月二八日限り二一万
円ずつの賃金の支払を求めるとともに、解雇は不法行為又は債務不履行に当たると
してそれによる慰謝料一〇〇万円の支払を求めた事案であり、原判決は、慰謝料請
求を棄却したものの、その余の被控訴人の各請求を認容したため、控訴人が控訴人
敗訴の部分の取消を求めて本件控訴に及んだ。
二 争いのない事実等
 原判決の「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」の「一 争いのない事実
等」(原判決三頁三行目から六頁二行目まで)に記載のとおりであるから、これを
引用する。ただし、原判決五頁四行目の「当月二〇」を「当月二〇日」に改める。
三 争点とこれについての当事者の主張
1 争点は、本件解雇が有効かどうかであり、具体的には、控訴人主張の本件解雇
事由が認められるかどうか、これが認められるとした場合、解雇権の濫用といえる
かどうかであり、これに関する当事者の主張は、2及び3に当審における当事者の
主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」の
「三 争点」の1及び2(原判決七頁四行目から三三頁五行目まで)に記載のとお
りであるから、これを引用する。
2 控訴人の当審における主張
(一) 本件残業命令に対する拒否について
(1) 本件三六協定は、控訴人と「労働者の過半数を代表する者」であるa(以
下「a」という。)との間で締結されたものである。aは、全従業員によって組織
された「友の会」で民主的に選出された代表者であるところ、「友の会」は、控訴
人と労働条件に関する交渉をするなどの労使慣行が存在し、労働組合の実質を備え
ていたものと認められるうえ、本件三六協定については、社内報や集会を利用する
などして全従業員の意思が反映されるような手続を経て、多数の意見に基づいて締
結されたものであるから、aが「労働者の過半数を代表する者」に当たることは明
らかである。したがって、本件三六協定は有効であるから、それが定める限度内の
残業を命じた本件残業命令も有効であり、被控訴人はこれに従う義務があった。
(2) 仮に本件三六協定が無効であるとしても、適式に届出がなされており、そ
の内容が法律に反したり、公序良俗に反するものではないから、無効であることが
確定するまで尊重されなければならない。そして、被控訴人は、採用されるに当た
り、就業規則の説明を受け、控訴人においては繁忙期があり、残業のあることを十
分に認識し、これを承諾したものである。また、繁忙期が始まった平成三年一一月
初めころに開催された激励会において、これに参加した被控訴人を含む従業員全員
が、一致して繁忙期の残業を行うことを承諾した。したがって、適式な本件三六協
定の定める限度内で残業を行うことは労働契約の内容となっていたものであるか
ら、被控訴人には本件残業命令に従う義務があった。
(3) 被控訴人が平成四年二月四日に診断書の提出をもって訴えた「眼精疲労」
は、被控訴人は電算写植機の操作作業に集中的に従事精励していたものではなく、
その作業能率等も劣っていたこと、繁忙期も終わりに近づいたころの平成四年二月
になって初めてその症状を訴え、眼科医でない内科・小児科医の診療を受け始めたものであり、他覚的所見もないことなどからすると、控訴人を安全配慮義務を欠如
しているが如くに陥れるための工作としてなされた虚偽のものと考えられるから、
本件残業命令に従う義務を免除させるものではない。
(二) その他の被控訴人の行為について
 控訴人が原審において解雇事由に該当すると主張した被控訴人の行為のうち、本
件残業命令に対する拒否以外のものは、被控訴人単独の争議行為又は怠業であり、
正当な組合活動とは認められず、労働組合法上の保証はないのであり、したがっ
て、控訴人の業務に対する妨害ないし雇用契約上の債務不履行に当たる。
3 控訴人の当審における主張に対する被控訴人の反論
(一) 本件残業命令に対する拒否について
(1) 「友の会」は、控訴人の役員も加入している親睦団体であり、労働組合で
はない。控訴人自らの求人票に「労働組合なし」と記入していることからも明らか
である。また、「友の会」が控訴人と労働条件に関する団体交渉をしてきたような
事実もない。
 本件三六協定は、「労働者の過半数を代表する者」である「営業部a」によって
締結されているが、社内報や集会によって全従業員の意思が確認された事実はな
く、aが選出された具体的な方法・手続も定かでない。
 したがって、本件三六協定は無効である。
(2) 本件三六協定が無効である以上、それを前提とする本件残業命令も無効で
あり、被控訴人がこれに従う義務はなかった。本件三六協定が無効であるとして
も、被控訴人は本件残業命令に従う義務があったとする控訴人の主張は暴論であ
る。
(3) 被控訴人は、電算写植機のモニターに写る凝縮された小さな文字を凝視す
るVDT作業を昼休みを除き連続して八時間ないし九時間余り行っていたものであ
り、既に平成三年九月中旬か下旬ころには眼精疲労を覚え始めていた。被控訴人の
眼精疲労がVDT作業に原因していることは明らかである。
二 その他の被控訴人の行為について争う。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、本件解雇は無効であり、被控訴人の請求は、慰謝料の支払を求め
る部分を除いて理由があるものと判断する。その理由は、以下に控訴人の当審にお
ける主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第三 
争点に対する判断」(原判決三三頁六行目から六五頁七行目まで)に記載のとおり
であるから、これを引用する。ただし、原判決三四頁三行目の「照会」を「紹介」
に、四四頁八行目の「同年一月三日」を「同年二月三日」に、五六頁二行目の「平
成四年一二月二〇日」を「平成三年一二月二〇日」に、六四頁末行の「(五
点)」」を「(五点)」)」に、六五頁三行目の「(五点)」を「(五点)」)」
にそれぞれ改める。
二 本件残業命令に従う義務の存否について
1 いかなる場合に使用者の残業命令に対し労働者がこれに従う義務があるかにつ
いてみるに、労働基準法三二条の労働時間を延長して労働させることに関し、使用
者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわ
ゆる三六協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、
使用者が当該事業場に適用される就業規則に右三六協定の範囲内で一定の義務上の
事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができ
る旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、そ
れが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者
は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務
を負うものと解するのが相当である(最高裁判所第一小法廷平成三年一一月二八日
判決・民集四五巻八号一二七〇頁参照)。そして、右三六協定は、実体上、使用者
と、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような
労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間において締結されたも
のでなければならないことは当然である。
2 これを本件についてみるに、まず控訴人の就業規則(甲二)によると、通常の
勤務時間について定められている(一七、一八条)ほか、「時間外及び休日勤務」
として「1 業務の都合で必要のある場合は、時間外及び休日勤務をさせることが
ある。2 時間外及び休日勤務は会社の指示によるか、又は会社の承諾を得た場合
に限る。3 前項の場合において、その所定労働時間に対して所定の割増賃金を支
払う。」と定められ、業務上の必要がある場合に控訴人の指示により残業が命じられることになっている。
 ところで、本件三六協定(甲四、乙一〇〇)は、平成三年四月六日に所轄の足立
労働基監督署に届け出られたものであるが、協定の当事者は、控訴人と「労働者の
過半数を代表する者」としての「営業部 a」であり、協定の当事者の選出方法に
ついては、「全員の話し合いによる選出」とされ、協定の内容は、原判決四頁五行
目から五頁二行目までに記載のとおりであった。
3 そこで、aが「労働者の過半数を代表する者」であったか否かについて検討す
るに、「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出さ
れなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとっ
て、選出される者が労働者の過半数を代表して三六協定を締結することの適否を判
断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持し
ていると認められる民主的な手続がとられていることが必要というべきである(昭
和六三年一月一日基発第一号参照)。
 この点について、控訴人は、aは「友の会」の代表者であって、「友の会」が労
働組合の実質を備えていたことを根拠として、aが「労働者の過半数を代表する
者」であった旨主張するけれども、「友の会」は、原判決判示のとおり、役員を含
めた控訴人の全従業員によって構成され(規約一条)、「会員相互の親睦と生活の
向上、福利の増進を計り、融和団結の実をあげる」(規約二条)ことを目的とする
親睦団体であるから、労働組合でないことは明らかであり、このことは、仮に「友
の会」が親睦団体としての活動のほかに、自主的に労働条件の維持改善その他経済
的地位の向上を目的とする活動をすることがあることによって変わるものではな
く、したがって、aが「友の会」の代表者として自動的に本件三六協定を締結した
にすぎないときには、aは労働組合の代表者でもなく、「労働者の過半数を代表す
る者」でもないから、本件三六協定は無効というべきである。
 次に、控訴人は、aが本件三六協定を締結するに当たっては、社内報や集会を利
用するなどして全従業員の意思が反映されるような手続を経て、多数の意見に基づ
いて締結されたものであって、aは「労働者の過半数を代表する者」である旨主張
する。しかしながら、本件三六協定の締結に際して、労働者にその事実を知らせ、
締結の適否を判断させる趣旨のための社内報が配付されたり集会が開催されたりし
た形跡はなく、aが「労働者の過半数を代表する者」として民主的に選出されたこ
とを認めるに足りる証拠はない。
 もっとも、当審証人aは、本件三六協定を締結するに当たり、まず控訴人から提
示された協定案を「友の会」の役員五人で検討したうえ、五人で手分けして全従業
員に諮ることとし、右協定案を添付して回覧に付し、全従業員の過半数の承認を得
た旨供述し、当審に至って提出された同人の陳述書(乙六八)にも同旨の記述がみ
られるけれども、この点は当初から争点の一つとされていたにもかかわらず、原審
で取り調べた証拠中には、わずかに同人の陳述書(乙三七)中に「友の会」内部で
検討したという程度の抽象的な記述があるにとどまり、それ以外に右と同旨のもの
は全くないのであって、当審証人aの右供述はいささか唐突の感を免れ難いのみな
らず、右協定案の回覧結果についての客観的証拠が提出されていないことなどに照
らすと、当審証人aの右供述等をにわかに採用することはできない。  


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2010年05月11日

著作権 民事訴訟

過払い金の返還を自分で請求するためには


このシステムの中心部分であるJAMICシステム工事別分類項目表(以
下「工事別分類項目表」という。)は、建築資材の分類方法を定めた編集著作物
(著作権法一二条一項)であり、また、これと一体をなしているJAMICシステ
ム工事分類項目別メーカーリスト(以下「工事分類項目別メーカーリスト」とい
う。)は、建築物全般にわたって使用するすべての資材を網羅した建築関連資材の
現物カタログを使用した百科辞典ともいうべき編集著作物であって、控訴人らは、
それぞれについて実名の登録を受けており(前者は文化庁の実名登録番号第一四二
七六号の一、後者は同登録番号第一四四三一号の一)、著作権を有する。
2 控訴人らは被控訴人に対し、昭和五九年六月ころ、JAMICシステムの使用
を許諾(以下「本件使用許諾契約」という。)した。
3 控訴人らの被控訴人に対する右使用の許諾は無償ではなかったのにかかわら
ず、被控訴人は使用料についての協議に応じず、現在に至るまでJAMICシステ
ムを無償で使用、販売している。
4 控訴人らは被控訴人に対し、平成五年一月二二日付反訴状で被控訴人の背信行
為を理由として本件使用許諾契約を解除する旨の意思表示をし、右書面は、同月二
六日被控訴人に到達した。
5 昭和五九年一月一日から平成三年一二月三一日までのJAMICシステムの使
用料相当額は五九九五万二八〇〇円である。
 したがって、被控訴人は控訴人らに対し、不法行為に基づく損害賠償金あるいは
不当利得に基づく返還金として右金員を支払うべき義務がある。
6 被控訴人は、控訴人らがJAMICシステムについて著作権を有することを争
うので、控訴人らは、紛争の発生を防止するため、このうちの少なくとも工事別分
類項目表及び工事分類項目別メーカーリストについて控訴人らが著作権を有するこ
との確認を求める利益がある。(この項の主張は当審において追加されたもの)
7 よって、控訴人らは被控訴人に対し、(一)仮に被控訴人が前記一の債権を有
するとしても、同債権と控訴人らの有する前記5の債権とを対当額をもって相殺
し、(二)控訴人らそれぞれに、前記5の内金として、金五〇〇万円及びこれに対
する反訴状送達の日の翌日である平成五年一月二七日から支払済みまで民法所定年
五分の割合による遅延損害金の支払いを求め、JAMICシステムの名称の使用、
JAMICシステム・マスターカード、JAMICシステム五〇音分類別メーカー
リスト及び工事分類項目別メーカーリストの各複製、販売、頒布の差し止め、及
び、JAMICシステム・マスターカードの引渡しを求め、かつ、工事別分類項目
表及び工事分類項目別メーカーリストについて著作権の確認を求める。(著作権確
認請求は当審において追加されたもの)
四 被控訴人(右請求原因、抗弁に対する認否)
1 請求原因1項の事実のうち、控訴人らがJAMICシステムを開発したことは
認めるが、その余は否認する。
 JAMICシステムとは、建築資材メーカーの作成した建築資材のカタログを一
定の分類項目に従って分類し、それぞれの専用ボックスに収納するというものであ
って、創作性がなく、著作権の保護の対象となるようなものではない。
 控訴人らは、工事別分類項目表、工事分類項目別メーカーリストについて、編集
著作権が成立する旨主張するが、編集著作権として保護されるためには、素材の選
択又は素材を収集し、分類し、選別し、配列するという一連の行為に知的創作性が
認められなければならない。
 しかるに、工事別分類項目表は、建設省大臣官房の標準仕様による工事別分類を
基礎とし、これに材料別、建物用途別を加えて分類したもので、既知の一般に行わ
れている工事別あるいは建材・設備資材の材料別の分類により作成されたごくあり
ふれたものである。
 工事分類項目別メーカーリストは、一般に行われている通常の分類に従った工事
別あるいは建材・設備資材の材料別の分類項目に、該当するメーカーの会社名を五
〇音順に並べたもので、ごくありふれたものである。
 これらのものは、知的活動を要せずして作成されたものであって、そこには素材
の選択、分類、配列等に作成者の精神的労力が加わった独創的思索が存するとはい
えず、創作性があるとはいえない。
2 同2項の事実は認める。
3 同3項の事実のうち、被控訴人がJAMICシステムを使用、販売しているこ
とは認めるが、その余は否認する。
4 同5項の事実は否認する。
5 同6項の事実のうち、控訴人らの著作権の主張を争っていることは認めるが、
その余は否認する。
五 控訴人ら(三の請求原因2、3、4項についての予備的請求原因、予備的請求
原因は当審において追加されたもの)
1 控訴人ら、ヱスビー食品株式会社、株式会社イチゼンは、昭和五九年六月ころ
共同して新会社(被控訴人会社)を設立し、控訴人らは、被控訴人に対してJAM
ICシステムの使用を許諾し、営業の実務面を担当してそのノウハウを提供し、ヱ
スビー食品株式会社側は、事業資金を提供し、双方共同してJAMICシステム事
業を展開するという内容の共同事業契約(以下「本件共同事業契約」という。)を
締結した。
2 しかし、控訴人らは、会社における役員の就任を拒否され、会社の経営から排
除され、被控訴人は、控訴人らの開発したJAMICシステムを無償で使用し、収
益をあげている。
3 控訴人【A】は、昭和六三年三月被控訴人会社を退職したが、この時点で控訴
人らと被控訴人は、共同事業に関して何の関係もなくなったもので、本件共同事業
契約は、黙示の合意により解除された。
六 被控訴人(右請求原因に対する認否)
1 請求原因1項の事実は否認する。
2 請求原因2項の事実のうち、控訴人らが役員に就任しなかったことは認める
が、その余は否認する。
3 請求原因3項の事実のうち、控訴人【A】が主張の頃に退職したことは認める
が、その余は否認する。  


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2010年05月06日

建物明渡等

借金や債務整理を検討している方に朗報です


 上告代理人右田堯雄の上告理由第一点について
 一 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 上告人は、昭和六〇年三月二〇日、建設業者であるD建設株式会社との間で、
上告人を注文者、D建設を請負人とし、代金三五〇〇万円、竣工期同年八月二五日
と定めて、上告人所有の宅地上に本件建物を建築する旨の工事請負契約を締結した
(以下「本件元請契約」という)。この契約には、注文者は工事中契約を解除する
ことができ、その場合工事の出来形部分は注文者の所有とするとの条項があった。
 2 D建設は、同年四月一五日、上告人から請け負った本件建物の建築工事を代
金二九〇〇万円、竣工期同年八月二五日の約定で、建設業者である被上告人に一括
して請け負わせた(以下「本件下請契約」という)。被上告人もD建設が上告人か
ら請け負った工事を一括して請け負うものであることは知っていたが、D建設も被
上告人もこの一括下請負について上告人の承諾を得ていなかった。なお、本件下請
契約には、完成建物や出来形部分の所有権帰属についての明示の約定はなかった。
 3 被上告人は、自ら材料を提供して本件建物の建築工事を行ったが、被上告人
が昭和六〇年六月下旬に工事を取りやめた時点においては、基礎工事のほか、鉄骨
構造が完成していたものの、陸屋根や外壁は完成しておらず、右工事の出来高は、
工事全体の二六・四パーセントであった(以下、右時点までの工事出来形部分を「
本件建前」という)。
 4 上告人は、D建設との約定に基づき、請負代金の一部として、契約締結時に一〇〇万円、昭和六〇年四月一〇日に九〇〇万円、同年五月一三日に九五〇万円の
合計一九五〇万円を支払った。
   他方、上棟工事は同年五月一〇日に完了し、それまでの工事分としてD建設
から被上告人に支払が予定されていた第一回の支払分五八〇万円の支払時期は同年
六月一五日であったが、その前々日の同月一三日にD建設が京都地方裁判所に自己
破産の申立てをし、同年七月四日に破産宣告を受けたため、被上告人は、下請代金
の支払を全く受けられなかった。
 5 上告人は、同年六月一七日ころ、被上告人から聞かされて初めて本件下請契
約の存在を知り、同月二一日、D建設に対して本件元請契約を解除する旨の意思表
示をするとともに、被上告人との間で建築工事の続行について協議したが、工事代
金額のことから合意は成立しなかった。そこで、上告人は、同月二九日、被上告人
に工事の中止を求め、次いで、同年七月二二日、被上告人を相手に本件建前の執行
官保管、建築妨害禁止等の仮処分命令を得て、その執行をした。
 6 その後、上告人は、同年七月二九日、株式会社Eとの間で代金二五〇〇万円、
竣工期同年一〇月一六日の約定で、本件建前を基に建物を完成させる旨の請負契約
を締結し、Eは、同月二六日までに右工事を完成させ、そのころ上告人から代金全
額の支払を受けて本件建物を引き渡し、上告人は、本件建物につき所有権保存登記
をした。
 二 原審は、右事実に基づき、(一) 本件建前は、いまだ不動産たる建物とはな
っていなかった、(二) D建設と被上告人との間では出来形部分の所有権帰属の合
意がなく、被上告人は本件元請契約には拘束されないから、本件建前の所有権は、
材料を自ら提供して施工した被上告人に帰属する、(三) 本件建物は、本件建前を
基にEが自ら材料を提供して建物として完成させたものであり、Eの施工価格とそ
の提供した材料の価格の合算額は本件建前の価格を超えると認められるから、本件建物の所有権はEに帰属し、Eと上告人の合意により上告人に帰属した、(四) 被
上告人は、本件建前が本件建物の構成部分となってその所有権を失ったことにより、
本件建前の価格相当の損失を被り、他方、上告人は、本件建前を基に建物を完成さ
せることをEに請け負わせ、その請負代金も本件建前分を除外した部分に対して支
払われたから、本件建前価格に相当する利得を得た、(五) したがって、上告人は
被上告人に対し、民法二四六条、二四八条により、本件建前価格に相当する七六五
万六〇〇〇円(下請代金二九〇〇万円の出来高二六・四パーセントに相当する額)
を支払う義務がある、と判断した。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
  建物建築工事請負契約において、注文者と元請負人との間に、契約が中途で解
除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合に、当該
契約が中途で解除されたときは、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請
負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との
間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、当該出来形部分の所有権は注文
者に帰属すると解するのが相当である。けだし、建物建築工事を元請負人から一括
下請負の形で請け負う下請契約は、その性質上元請契約の存在及び内容を前提とし、
元請負人の債務を履行することを目的とするものであるから、下請負人は、注文者
との関係では、元請負人のいわば履行補助者的立場に立つものにすぎず、注文者の
ためにする建物建築工事に関して、元請負人と異なる権利関係を主張し得る立場に
はないからである。
  これを本件についてみるのに、前示の事実関係によれば、注文者である上告人
と元請負人であるD建設との間においては、契約が中途で解除された場合には出来
形部分の所有権は上告人に帰属する旨の約定があるところ、D建設倒産後、本件元請契約は上告人によって解除されたものであり、他方、被上告人は、D建設から一
括下請負の形で本件建物の建築工事を請け負ったものであるが、右の一括下請負に
は上告人の承諾がないばかりでなく、上告人は、D建設が倒産するまで本件下請契
約の存在さえ知らなかったものであり、しかも本件において上告人は、契約解除前
に本件元請代金のうち出来形部分である本件建前価格の二倍以上に相当する金員を
D建設に支払っているというのであるから、上告人への所有権の帰属を肯定すべき
事情こそあれ、これを否定する特段の事情を窺う余地のないことが明らかである。
してみると、たとえ被上告人が自ら材料を提供して出来形部分である本件建前を築
造したとしても、上告人は、本件元請契約における出来形部分の所有権帰属に関す
る約定により、右契約が解除された時点で本件建前の所有権を取得したものという
べきである。  


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2010年05月01日

不当利得返還

借金を完済すること


 上告代理人田村彰平の上告理由第一点について
 共同抵当権の目的たる甲・乙不動産が同一の物上保証人の所有に属し、甲不動産
に後順位の抵当権が設定されている場合において、甲不動産の代価のみを配当する
ときは、後順位抵当権者は、民法三九二条二項後段の規定に基づき、先順位の共同
抵当権者が同条一項の規定に従い乙不動産から弁済を受けることができた金額に満
つるまで、先順位の共同抵当権者に代位して乙不動産に対する抵当権を行使するこ
とができると解するのが相当である。けだし、後順位抵当権者は、先順位の共同抵
当権の負担を甲・乙不動産の価額に準じて配分すれば甲不動産の担保価値に余剰が
生ずることを期待して、抵当権の設定を受けているのが通常であって、先順位の共
同抵当権者が甲不動産の代価につき債権の全部の弁済を受けることができるため、
後順位抵当権者の右の期待が害されるときは、債務者がその所有する不動産に共同
抵当権を設定した場合と同様、民法三九二条二項後段に規定する代位により、右の
期待を保護すべきものであるからである。甲不動産の所有権を失った物上保証人は、
債務者に対する求償権を取得し、その範囲内で、民法五〇〇条、五〇一条の規定に
基づき、先順位の共同抵当権者が有した一切の権利を代位行使し得る立場にあるが、
自己の所有する乙不動産についてみれば、右の規定による法定代位を生じる余地は
なく、前記配分に従った利用を前提に後順位の抵当権を設定しているのであるから、
後順位抵当権者の代位を認めても、不測の損害を受けるわけではない。所論引用の
判例は、いずれも共同抵当権の目的不動産が同一の物上保証人の所有に属する事案
に関するものではなく、本件に適切でない。
 そして、右の場合において、先順位の共同抵当権者が後順位抵当権者の代位の対
象となっている乙不動産に対する抵当権を放棄したときは、先順位の共同抵当権者
は、後順位抵当権者が乙不動産上の右抵当権に代位し得る限度で、甲不動産につき、
後順位抵当権者に優先することができないのであるから(最高裁昭和四一年(オ)
第一二八四号同四四年七月三日第一小法廷判決・民集二三巻八号一二九七頁参照)、
甲不動産から後順位抵当権者の右の優先額についてまで配当を受けたときは、これ
を不当利得として、後順位抵当権者に返還すべきものといわなければならない(最
高裁平成二年(オ)第一八二〇号同三年三月二二日第二小法廷判決・民集四五巻三
号三二二頁参照)。
 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違
法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用する
ことができない。
 同第二点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する
証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。  


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2010年04月21日

所得税更正処分取消請求事件

借金返済で困ったなら


第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告の昭和四四年分ないし同四六年分の各所得税について同四八年三月
七日付でした各更正処分(ただし、昭和四四年分については異議決定及び審査裁決
により、同四五年分及び同四六年分については審査裁決により、それぞれ一部取消
しがされた後のもの)をいずれも取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 課税処分の経緯
原告の昭和四四年ないし同四六年(以下「本件係争年」という。)における所得税
につき、原告のした申告、被告のした更正(以下「本件処分」という。)及び過少
申告加算税賦課決定(以下、本件処分と合わせて「本件処分等」という。)、異議
決定並びに国税不服審判所長のした審査裁決の経緯は、資料1別表(一)ないし
(三)記載のとおりである。
2 本件処分の違法
しかしながら、本件処分(昭和四四年分については異議決定及び審査裁決により、
同四五年分及び同四六年分については審査裁決により、それぞれ一部取消し後のも
の。以下同じ。)は、原告の所得を過大に認定したものであって、違法である。
3 結論
よって、原告は、本件処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1項の事実は認める。
2 同2項の事実は否認する。
3 同3項は争う。
三 被告の主張
1 当事者
原告は、本件係争年当時、その肩書地において、丸誉産業の屋号で金融業(以下
「本件営業」という。)を営んでいた者である。
2 推計の必要性
被告は、原告から提出された本件係争年分の所得税確定申告書(所得税法一四三条
所定の青色申告の承認を受けていない、いわゆる白色申告書)記載の所得金額につ
いて、昭和四七年九月ころ、被告係官を原告方に赴かせ、実地に調査を行わせた。
右係官は、原告に対し、本件営業に関する帳簿書類等の提示を求めたが、原告から
小口貸付台帳(以下「本件台帳」という。)等一部の書類の提示しか得られなかっ
たので、原告の所得金額を実額で把握することができなかった。
そこで、被告は、やむを得ず、原告の取引先等に対して原告との取引状況等の調査
をし、その調査結果に基づき、推計(一部は実額)により本件係争年における原告
の所得金額を算定し、本件処分等を行ったものである。
3 本件係争年における原告の所得金額の計算根拠と推計の合理性
(一) 昭和四四年分の事業所得金額 金二七二三万七二七三円
右は、次の(1)記載の総収入金額から(2)記載の必要経費を控除したものであ
る。
(1) 総収入金額 金三〇六九万四三八〇円
(1) 証書貸付等に係る利息収入 金一五四二万一八四五円
被告の調査の結果、原告が本件営業に用いていた銀行預金口座(後記(2)イ iないしv記載のとおり、本人名義、家族名義、他人名義及び架空名義の各口座を含
む。以下後記(二)(1)(3)iないしvii及び(三)(3)iないしx記載
の銀行預金口座を合わせて「本件口座」という。)への入金状況等に基づき、被告
が貸付先を把握することができた貸付(以下「証書貸付等」という。)に係る利息
収入を実額で算出した金額であり、次のイ及びロの合計金額からハの金額を控除し
たものである。
イ 昭和四三年分前受利息 金九九万三六六四円
昭和四三年中に受け取った利息のうち、同四四年の貸付期間に対応する部分であ
り、その明細は、資科2別紙一(別紙(8))記載のとおりである。
ロ 昭和四四年分受取利息 金一五二一万一三五六円
昭和四四年分として受け取った利息であり、その明細は、資料2別紙一 (別紙
(9))記載のとおりである。
なお、原告は、Aに対する貸付(番号1及び2)につき、準備手続においては取引
関係のあったことを認めた上で利率についてのみ争っていたにもかかわらず、昭和
六二年一二月二二日付準備書面で取引自体を争うに至った。これは自白の撤回に該
当するが、原告は自白の撤回が許されるための要件を何ら主張・立証せず、被告
は、これに異議がある。また、Bに対する貸付(番号100)についても、準備手
続においては争っていなかったところ、右準備書面で自白を撤回したが、原告は自
白の撤回が許されるための要件を何ら主張・立証せず、被告は、これに異議があ
る。
ハ 昭和四四年分前受利息 金七八万三一七五円
ロのうち昭和四五年の貸付期間に対応する部分であるから、同四五年の総収入金額
に算入すべきものであり、その明細は、資料2別紙一 (別紙(5))記載のとお
りである。
(2) 貸付先不明の貸付に係る利息 金一五二七万二五三五円
貸付先不明の貸付に係る利息収入については実額で把握することができないが、原
告は、貸付金を回収する都度、右回収金を本件口座に入金しており、本件口座は貸
付台帳と同一の機能を果たしていると認められるので、本件口座への入金総額か
ら、
a (1)の証書貸付等に係る貸付元金及び利息の入金
b 金融機関からの借入金及び預金利息の入金
c 貸付金の回収かどうか明らかでない入金
d その他貸付金の回収と認められない入金
(以下右aないしdの合計を「除外分」という。)を控除したものが、貸付先不明
の貸付に係る貸付元金及び利息の回収金額であり、これに(1)における「総入金
額」に対する「受取利息」の割合(以下「受取利息割合」という。) 一五・五六
パーセントを乗じたものが、貸付先不明の貸付に係る利息収入金額というべきであ
る。
右受取利息割合は、(1)における貸付のうち、他の取引と比べて取引口数が例外
的に多い特殊なもので標本として適当でないと考えられるC及びDに対する貸付
(以下「C関係の貸付」という。)を除いた貸付を基礎としており、その本件係争
年別の明細は、資料4記載のとおりであるが、本件営業は一般の物品販売と異な
り、各年毎の割合を算出することが必ずしも合理的とは限らない(例えば、証書貸
付の場合、貸付を行った年の入金は利息のみであり、元金を回収した年の入金は元
利金となるので、各年毎の受取利息割合の変動が大きい。)ので、長期又は短期の
貸付元金及び利息が大体回収されると考えられる三年間の受取利息割合を平均した
一五・五六パーセントを、本件係争年を通じて用いることが合理的である。
イ 本件口座への入金総額 金一億七三九七万六一六四円
i 中央相互銀行今池支店本人名義 金四三七〇万三一八八円
その明細は、資料3別紙(1)記載のとおり。
ii 同E名義 金二一二八万五四九一円
その明細は、資料3別紙(2)記載のとおり。
iii 同F名義 金七八一万四五〇六円
その明細は、資料3別紙(3)記載のとおり。
iv 中央信託銀行今池支店本人名義 金八四〇七万八三二八円
その明細は、資料3別紙(4)記載のとおり。
v 同G名義 金一七〇九万四六五一円
その明細は、資科3別紙(5)記載のとおり。
ロ 除外分 金七五八二万三六二〇円
i 前記aに当たるもの 金二六一八万三三一七円
イ iの口座における合計金一一五一万九五七二円と同ivの口座における合計金
一四六六万三七四五円を加えた金額.
ii 前記bに当たるもの 金七万〇四六〇円
イ iの口座における合計金二万六七二〇円、同一iiの口座における合計金三四
六六円、同iiiの口座における合計金一万五五〇六円、同ivの口座における合
計金二万二六一七円及び同vの口座における合計金二一五一円を合計した金額。
iii 前記cに当たるもの 金三九二三万二三八五円
イ i 口座における合計金三六〇円、同iiの口座における合計金二〇一八万二
〇二五円、同iiiの口座における合計金四五〇円万円、同ivの口座における合
計金五五万円及び同vの口座における合計金一四〇〇万円を合計した金額。
iv 前記dに当たるもの 金一〇三三万七四五八円
イ iの口座における合計金三三五万二九〇〇円、同iiの口座における合計金五
〇万円、同ivの口座における金四九八万四五五八円及び同vの口座における合計
金一五〇万円を合計した金額。
(2) 必要経費 金三四五万七一〇七円
(1) 原告申告に係る必要経費 金二三六万二〇四八円
(2) (1)に加算すべき経費 金一〇九万五〇五九円
イ 減価償却費の計上漏れ 金一三万八八四七円
ロ 借入利息の計上漏れ 金九五万六二一二円
i 中央相互銀行今池支店 金四七万八九五二円
ii 河和農業協同組合 金四七万七二六〇円
(二) 昭和四五年分の事業所得金額 金五四一五万二五三二円
右は、次の(1)記載の総収入金額から(2)記載の必要経費を控除したものであ
る。
(1) 総収入金額 金五七八五万二九九六円
(1) 本件台帳記載の利息収入 金一九四万三五二〇円
原告のした貸付のうち、本件台帳に記載された貸付の貸付先、貸付金額、約定利率
及び利息収入の明細は、
資料2別紙二番号1ないし20記載のとおりである。
(2) 証書貸付等に係る利息収入 金三八二二万三二七五円
証書貸付等に係る利息収入を実額で算出した金額であり、次のイないしハの合計金
額から二の金額を控除したものである。
イ 昭和四四年分前受利息 金七八万三一七五円
昭和四四年に受け取った利息のうち、同四五年の貸付期間に対応する部分であり、
その明細は、資料2別紙一(別紙(5))記載のとおりである。
ロ 昭和四五年分受取利息 金三一三一万九二三二円
昭和四五年分として受け取った利息であり、その明細は、資料2別紙一(別紙
(6))記載のとおりである。
なお、原告は、Aに対する貸付(番号1ないし3)につき、準備手続においては取
引関係のあったことを認めた上で利率についてのみ争っていたにもかかわらず、昭
和六二年一二月二二日付準備書面で取引自体を争うに至った。これは自白の撤回に
該当するが、原告は自白の撤回が許されるための要件につき何ら主張・立証せず、
被告は、これに異議がある。
ハ 昭和四五年分未収利息 金六一九万〇六四二円
その明細は、資科2別紙一(別紙(7))記載のとおりである。
ニ 昭和四五年分前受利息 金六万九七七四円
ロのうち昭和四六年の貸付期間に対応する部分であるから、同四六年の総収入金額
に算入すべきものであり、その明細は、資料2別紙一 (別紙(1))記載のとお
りである。
(3) 貸付先不明の貸付に係る利息 金一七六八万六二〇一円
次のイの本件口座への入金総額からロの除外分を控除し、これに受取利息割合一
五・五六パーセントを乗じたものである。
イ 本件口座への入金総額 金三億一九〇〇万八九八三円
i 中央相互銀行今池支店本人名義 金八二七八万七四六七円
その明細は、資料3別紙(6)記載のとおり。
ii 同E名義 金三二一一万三六七〇円  


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2010年04月13日

預り保証金等返還請求事件 

過払い金に関する事例研究


 主    文
     原判決を破棄する。
     本件を東京高等裁判所に差し戻す。   
         理    由
 上告代理人村田浩の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
 1 被上告人は、平成元年五月ころ、千葉県夷隅郡a町に「Eゴルフ場」(以下
「本件ゴルフ場」という。)を建設する計画を策定した。被上告人は、本件ゴルフ
場の建設費用を約二三六億円と想定していたが、そのうちの約三五億円は土地の取
得費用、約七〇億円はゴルフコースの工事費用、約九〇億円はクラブハウス等の設
備の工事費用であった。
 2 被上告人は、平成二年八月ころ、本件ゴルフ場の会員の募集を開始した。上
告人は、同年九月二八日、被上告人との間で、本件ゴルフ場の正会員となる本件入
会契約を締結し、同日、入会金二五〇万円、預託金二二五〇万円及び消費税七万五
〇〇〇円を被上告人に支払った。
 3 被上告人が本件ゴルフ場の会員の募集のために作成したパンフレットには、
「クラブハウス及びホテル概要」欄に、建築規模(地上四階地下一階等)のほか、
附帯施設〈ホテル〉として、「客室、レストラン(和食・洋食各一)、メインバー、
コーヒーショップ、メンバーズサロン、コンベンションホール、室内外プール、ア
スレチックジム、マージャンルーム」の記載があり、クラブハウス及びホテルの平
面図が掲載されていた。そして、右パンフレットにおいては、「南欧の高級リゾー
トを思わせる瀟洒な外観とゆったりとした客室。本物のクラブライフを知るゴルフ
ァーのための最高のホスピタリティーがここにある。」との見出しの下に、本件ゴ
ルフ場の特徴として、四八の客室のすべてが一八坪以上のロイヤルツインルームになっている高級ホテルが併設され、本件ゴルフ場において快適なリゾートライフを
体験できることが強調されていた。また、本件ゴルフ場の会則には、会員がゴルフ
コース及びこれに附帯する諸施設を利用する権利を有する旨の定めがある。
 4 被上告人は、資金調達の都合から、予定を変更してクラブハウスやホテルの
建設工事を第一期分と第二期分とに分けて行うことにし、第一期分として一一の客
室を備えたクラブハウスを建設し、第二期分として本格的ホテル、室内プールその
他の施設を建設することにしたが、上告人が本件入会契約を解除する旨の意思表示
をした平成七年一月二〇日の時点では、本件ゴルフ場はいまだオープンしていなか
った。被上告人は、第一期分の工事を完成させた上で同年四月二六日に本件ゴルフ
場をオープンさせたが、第二期分の工事については、基礎部分が施工されたのみで、
工事を続行するための具体的計画は立てられていない。
 二 本件は、上告人が、被上告人の債務不履行を理由に本件入会契約を解除した
として、被上告人に支払った入会金二五〇万円、預託金二二五〇万円及び消費税七
万五〇〇〇円の返還を求める事案であり、上告人は、高級ホテル、室内外プール、
アスレチックジム等の附帯施設を設置して会員の利用に供する債務を被上告人が履
行しなかったことを本件入会契約の解除事由として主張している。
 原審は、前記の事実関係の下において、次のとおり判示して、上告人の請求を棄
却した。すなわち、(一) 預託金会員制のゴルフクラブの会員の本質的な権利は
預託金返還請求権とゴルフ場の施設利用権であり、右の施設利用権とは一般の利用
者に比べて有利な条件で継続的にゴルフプレーを行うために当該ゴルフ場の施設を
利用する権利をいうと解されるから、ゴルフプレーを行うことと直接の関係のない
施設を提供することは、ゴルフクラブの入会契約の要素たる債務とはなり得ないと
解すべきである。(二) したがって、ゴルフプレーを行う本質的な権利が会員に
保障されている場合には、特段の事情がない限り、ゴルフプレーを行う上で必要不可欠ではない施設の内容の変更や完成の遅延等を理由に会員が入会契約を解除する
ことは許されないと解するのが相当である。(三) 被上告人は、ゴルフコースの
ほか、クラブハウスを完成させ、その中に一定の格式を有した客室やレストランを
確保しており、右のクラブハウスはホテルの代替施設としての役割を果たしている
と認められ、本件ゴルフ場は会員のゴルフプレーのために必要な施設を一応備えて
いるというべきであるから、本件附帯施設が整備されていないことを理由に上告人
が本件入会契約を解除することは許されない。
 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 【要旨】原審の認定したところによれば、被上告人が会員の募集のために作
成したパンフレットには、本件ゴルフ場に高級ホテルが建設されることが強調され
ていたというのであるから、上告人が、被上告人との本件ゴルフ場の入会契約を締
結するに当たり、右のパンフレットの記載を重視した可能性は十分あるものと解さ
れる。また、前記事実関係によれば、本件ゴルフ場の入会金及び預託金の額は前記
パンフレットに記載された本件ゴルフ場の特徴に相応して高額になっていたが、実
際に被上告人によって提供された施設はその規模や構造等において右のパンフレッ
トの記載には到底及ばず、このために上告人が本件入会契約を締結した目的を達成
できない可能性のあることがうかがわれる。これらの事実は、被上告人において前
記パンフレットに記載されたホテル等の施設を設置して会員の利用に供することが
本件入会契約上の債務の重要な部分を構成するか否かを判断するに当たって考慮さ
れる必要のある事実である。
 2 そうすると、右の事実の存否等についての審理を尽くさず、ゴルフプレーを
行うために必要不可欠ではない施設の完成の遅延を理由に会員が入会契約を解除す
ることは許されないとの見解に立って上告人の請求を棄却した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明
らかである。この趣旨をいう論旨は理由があり、その余の論旨について判断するま
でもなく、原判決は破棄を免れない。そこで、前記パンフレットに記載されたホテ
ル等の施設を設置して上告人らの利用に供することが本件入会契約上の債務の重要
な部分を構成するか否かなどについて更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差
し戻すこととする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。  


Posted by みょちゃん at 13:22Comments(0)

2009年01月17日

バイオハザード☆

会社のお友達にバイオハザードのゲームを借りて早8日・・・

もうクリアしちゃいました☆

ほぼ毎日のよぅに会社から帰ったらやっていたので。

まぁいくらなんでも早すぎかなぁ。

妹と一緒にビクビクワクワクしながら、すごく楽しみました☆

すっごく久しぶりにこんなにゲームをしてびっくりしたことが・・・

それは、オープニングとエンディングが、な、なんと実写!!

ゲームなのに映画のワンシーンのようなこの構成。

すげーの一言です。

お友達は続きも貸してくれるとの事。

へへ、楽しみです☆

昨日は、ネイルサロン 東京に行ってきました。

ネイルは去年の夏から始めたのですが、それ以来ずっーとやっています。

指先は生活してるだけで見る機会が多いので、汚いと落ち着かないんですよね。

お友達もやってるので、結構一緒に行くことも多いですしね。

今日はネイリストさんがしていたネイルがすごくかわいかったので、思わずそれをマネっこです。

パープルラメにお花のアート♪

ちょっと大人って感じ☆

前に行っていたネイルサロン 恵比寿も好きだったのですが、引っ越してからは行かなくなっちゃいました。

やっぱり3週間に1回なのに遠くに行くのはしんどいです。

この前スタイリッシュネイルで見たネイルサロン 大阪ネイルサロン 立川ネイルサロン 渋谷の冬ネイル、すごくかわいかったです。

次回はそんな感じにしてもらおうと写メとっときました。  


Posted by みょちゃん at 18:42Comments(1)
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